MSGOP
Section: Linux Programmer's Manual (2)
Updated: 2014-08-19
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名前
msgrcv, msgsnd - System V メッセージキュー操作
書式
#include <sys/types.h>
#include <sys/ipc.h>
#include <sys/msg.h>
int msgsnd(int msqid, const void *msgp, size_t msgsz, int msgflg);
ssize_t msgrcv(int msqid, void *msgp, size_t msgsz, long msgtyp,
int msgflg);
説明
システムコール msgsnd() と msgrcv() はそれぞれ、 System V メッセージキューへのメッセージの送信と、
メッセージの受信に使用される。呼び出し元プロセスは、 メッセージを送信するためにはメッセージキューに対する書き込み許可を、
メッセージを受信するためには読み出し許可を持っていなければならない。
呼び出し元プロセスは以下に示す構造体を用意し、この構造体への ポインターを msgp 引き数として渡す。
struct msgbuf {
long mtype; /* message type, must be > 0 */
char mtext[1]; /* message data */
};
mtext フィールドは配列 (または他の構造体) で、その大きさは 非負の整数である msgsz で指定される。 長さ 0 のメッセージ
(つまり mtext フィールドがないメッセージ) も認められている。 mtype フィールドは厳密に正の整数でなければならない。
この値は、メッセージを受信するプロセスでメッセージを選択するために 使用される (下記の msgrcv() の説明を参照のこと)。
msgsnd()
msgsnd() システムコールは msgp 引き数で指定されたメッセージのコピーを msqid
で指定された識別子を持つメッセージキューへ追加する。
キューに十分な空き容量がある場合、 msgsnd() は直ちに成功する。 キューの容量は、メッセージキューのデータ構造体の
msg_qbytes フィールドで制御される。 キュー作成時にこのフィールドは MSGMNB に初期化されるが、この制限は
msgctl(2) を使って変更できる。 次のいずれかの条件が成立する場合に、メッセージキューは一杯と判断される。
- *
-
新しいメッセージをそのキューに追加すると、 そのキューの全バイト数がキューの最大サイズ (msg_qbytes フィールド)
を超過してしまう場合。
- *
-
そのキューにもう一つメッセージを追加すると、 そのキューが全メッセージ数がキューの最大サイズ (msg_qbytes フィールド)
を超過してしまう場合。 このチェックは、無限個の長さ 0 のメッセージをそのキューに追加するのを防ぐために必要である。 長さ 0
のメッセージはデータを含まないが、 (ロックされた) カーネルメモリーを消費するからである。
そのキューに十分な領域がない場合、 デフォルトの動作では、 必要な領域ができるまで msgsnd() は停止 (block) する。
msgflg に IPC_NOWAIT が指定された場合、 msgsnd() はエラー EAGAIN で失敗する。
停止している msgsnd() は以下の場合にも失敗する。
- *
-
キューが削除された。 この場合、 errno は EIDRM に設定される。
- *
-
シグナルが捕捉された。 この場合、 errno は EINTR に設定される。 signal(7) 参照。 (msgsnd()
は、たとえシグナルハンドラーの設定時に SA_RESTART を指定していたとしても、シグナルハンドラーによって割り込まれた後で
自動的に再スタートすることは決してない。)
正常に終了した場合、メッセージキューのデータ構造体は以下のように 更新される:
-
msg_lspid には呼び出し元プロセスのプロセス ID が設定される。
-
msg_qnum は 1 増加する。
-
msg_stime には現在時刻が設定される。
msgrcv()
msgrcv() システムコールは msqid で指定されたキューからメッセージを削除し、 msgp
で指定されたバッファーにそのメッセージを格納する。
msgsz 引き数には msgp 引き数で指定された構造体の mtext メンバーの最大のバイト数を指定する。
メッセージのテキストの長さが msgsz より大きい場合の動作は、 msgflg に MSG_NOERROR
が指定されているかどうかで決まる。 MSG_NOERROR が指定されていれば、メッセージのテキストは切り詰められる
(切り捨てられた部分は失われる)。 MSG_NOERROR が指定されていなければ、メッセージはキューから削除されず、 システムコールは -1
を返して失敗し、 errno に E2BIG が設定される。
MSG_COPY が msgflg に指定されていない場合 (下記参照)、 msgtyp 引き数には要求するメッセージの型を指定する。
型は以下のように指定する:
- *
-
msgtyp が 0 ならば、キューの最初にあるメッセージが読み込まれる。
- *
-
msgtyp が 0 より大きい場合、 msgflg に MSG_EXCEPT が指定されていなければ、 msgtyp
型のキューの最初のメッセージが読み込まれる。 MSG_EXCEPT が指定された場合は、 msgtyp
型以外のキューの最初のメッセージが読み込まれる。
- *
-
msgtyp が 0 より小さければ、 msgtyp の絶対値以下で最も小さい型を持つキューの最初のメッセージが読み込まれる。
msgflg 引き数には、以下のフラグを任意の数だけ (0個も可)、これらの OR で指定する:
- IPC_NOWAIT
-
キューに要求された型のメッセージがない場合には直ちに返る。 システムコールは失敗し、 errno には ENOMSG が設定される。
- MSG_COPY (Linux 3.8 以降)
-
キューの中で msgtyp で指定した位置にあるメッセージのコピーを、キューを変更せずに (非破壊的に) 取り出す (メッセージの位置は 0
から順番に番号が割り当てられる)。
このフラグは IPC_NOWAIT と組み合わせて指定しなければならない。 その結果、指定した位置にメッセージがなかった場合、呼び出しはエラー
ENOMSG ですぐに失敗する。 MSG_COPY と MSG_EXCEPT は msgtyp
の意味を相容れない方法で使用するため、この二つのフラグの両方を msgtyp に指定することはできない。
MSG_COPY フラグは、 カーネルのチェックポイント復元 (checkpoint-restore) 機能の実装のために追加された。
このフラグはカーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE オプションを有効にして作成された場合にのみ利用できる。
- MSG_EXCEPT
-
0 より大きな msgtyp と一緒に使用して、 msgtyp 以外のキューの最初のメッセージを読み込む。
- MSG_NOERROR
-
msgsz バイトよりも長かった場合はメッセージのテキストを切り詰める。
要求された型のメッセージが存在せず、 msgflg に IPC_NOWAIT が指定されていなかった場合、呼び出し元プロセスは
以下のいずれかの状況になるまで停止 (block) される:
- *
-
要求している型のメッセージがキューへ入れられた。
- *
-
メッセージキューがシステムから削除された。 この場合、システムコールは失敗し、 errno に EIDRM が設定される。
- *
-
呼び出し元プロセスがシグナルを捕獲した。 この場合、システムコールは失敗し、 errno に EINTR が設定される。
(msgrcv() は、たとえシグナルハンドラーの設定時に SA_RESTART
を指定していたとしても、シグナルハンドラーによって割り込まれた後で 自動的に再スタートすることは決してない。)
正常に終了した場合、メッセージキューのデータ構造体は以下のように 更新される:
-
msg_lrpid には呼び出し元プロセスのプロセス ID が設定される。
-
msg_qnum は 1 減算される。
-
msg_rtime には現在の時刻が設定される。
返り値
失敗した場合は、どちらの関数も -1 を返し、エラーを errno に表示する。成功した場合、 msgsnd() は 0 を返し、
msgrcv() は mtext 配列に実際にコピーしたバイト数を返す。
エラー
msgsnd() が失敗した場合、 errno に以下の値のいずれかが設定される:
- EACCES
-
呼び出し元プロセスにはメッセージキューに対する書き込み許可がなく、 CAP_IPC_OWNER ケーパビリティもない。
- EAGAIN
-
msg_qbytes がキューの制限を超えていたため、メッセージを送ることができず、かつ msgflg に IPC_NOWAIT
が指定されていた。
- EFAULT
-
msgp が指しているアドレスがアクセス可能でない。
- EIDRM
-
メッセージキューが削除された。
- EINTR
-
メッセージキューが要求した条件を満たすまで停止している時に、 プロセスがシグナルを捕獲した。
- EINVAL
-
msqid が不適切な値であるか、 mtype が正の値でないか、 msgsz が不適切な値 (0 以下か、システムで決まる値
MSGMAX よりも大きい値) である。
- ENOMEM
-
msgp が指すメッセージのコピーを作成するのに十分なメモリーがシステムに存在しない。
msgrcv() が失敗した場合には errno に以下の値のいずれかが設定される:
- E2BIG
-
メッセージのテキストの長さが msgsz よりも大きく、 msgflg に MSG_NOERROR が設定されていなかった。
- EACCES
-
呼び出し元プロセスにはメッセージキューに対する読み込み許可がなく、 CAP_IPC_OWNER ケーパビリティもない。
- EAGAIN
-
キューにはメッセージがなく、 msgflg に IPC_NOWAIT が指定された。
- EFAULT
-
msgp が指しているアドレスがアクセス可能でない。
- EIDRM
-
メッセージを受信するためにプロセスが停止している間に、 メッセージキューが削除された。
- EINTR
-
メッセージを受けるためにプロセスが停止している間に、 プロセスがシグナルを捕獲した。 signal(7) 参照。
- EINVAL
-
msgqid が不正か、 msgsz が 0 より小さい。
- EINVAL (Linux 3.14 以降)
-
msgflg に MSG_COPY が指定されたが、 IPC_NOWAIT が指定されていない。
- EINVAL (Linux 3.14 以降)
-
msgflg に MSG_COPY と MSG_EXCEPT の両方が指定された。
- ENOMSG
-
msgflg に IPC_NOWAIT が設定されており、 メッセージキューに要求された型のメッセージが存在しなかった。
- ENOMSG
-
IPC_NOWAIT と MSG_COPY が msgflg に指定されたが、 キューには msgtyp
未満のメッセージしか入っていなかった。
- ENOSYS (Linux 3.8 以降)
-
msgflg に MSG_COPY が指定されたが、カーネルが CONFIG_CHECKPOINT_RESTORE
なしで作成されている。
準拠
SVr4, POSIX.1-2001.
フラグ MSG_EXCEPT と MSG_COPY は Linux 固有である。 これらの定義を得るには、機能検査マクロ
_GNU_SOURCE を定義する。
注意
Linux や POSIX の全てのバージョンでは、 <sys/types.h> と <sys/ipc.h>
のインクルードは必要ない。しかしながら、いくつかの古い実装ではこれらのヘッダーファイルのインクルードが必要であり、 SVID
でもこれらのインクルードをするように記載されている。このような古いシステムへの移植性を意図したアプリケーションではこれらのファイルをインクルードする必要があるかもしれない。
msgp 引き数は、 glibc 2.0 と 2.1 では struct msgbuf * と宣言されている。glibc 2.2
以降では、 SUSv2 と SUSv3 の要求通り、void * と宣言されている。
以下は msgsnd システムコールに影響するシステム制限である:
- MSGMAX
-
メッセージのテキストの最大サイズ: 8192 バイト (Linux では、この制限値は /proc/sys/kernel/msgmax
経由で読み出したり変更したりできる)。
- MSGMNB
-
バイト単位でのメッセージキューのデフォルトの最大サイズ : 16384 バイト。 (Linux では、この制限値は
/proc/sys/kernel/msgmnb 経由で読み出したり変更したりできる)。 特権プロセス (Linux ではケーパビリティ
CAP_SYS_RESOURCE を持ったプロセス) は msgctl(2) システムコールでメッセージキューのサイズを
MSGMNB よりも大きい値に増やすことができる。
現在の実装では、システム全体のメッセージヘッダーの上限数 (MSGTQL) と、システム全体のメッセージプールの最大バイト数
(MSGPOOL) に関して実装依存の制限はない。
バグ
Linux 3.13 以前では、 msgrcv() の呼び出しで MSG_COPY フラグは指定されたが IPC_NOWAIT
は指定されず、かつメッセージキューに msgtyp 未満のメッセージしかない場合に、 msgrcv()
の呼び出しはキューに次のメッセージが書き込まれるまで停止していた。 新しいメッセージが書き込まれた時点で、 そのメッセージが指定された位置
msgtyp かどうかに関わらず、 msgrcv() の呼び出しは新たに書き込まれたメッセージのコピーを返していた。 このバグは
Linux 3.14で修正された。
msg_copy に MSG_COPY と MSG_EXCEPT の両方を指定するのは、論理的なエラーである
(なぜならこれらのフラグは msgtyp を別の意味で解釈するからである)。 Linux 3.13 以前では、msgrcv()
がこのエラーを検出しなかった。 このバグは Linux 3.14 で修正された。
関連項目
msgctl(2), msgget(2), capabilities(7), mq_overview(7),
svipc(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部
である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
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